切り傷
切り傷にも、鋭い刃物で切った傷から、角にぶつけてパクッと割れるように切れた傷まで、さまざまです。
切ったところから出血しているときには、切ったところをまずはしっかり圧迫しましょう。指先を切ると、ちょっとびっくりするくらい血が出て慌てると思います。ちょっと圧迫したくらいでは、血もなかなか止まりません。
「先から血が出ているんだから、根元を縛ればいいんだ!!」と、急いで指の付け根をゴムで縛り始めたあなた。やめましょう。中途半端に縛ると、かえって指には血がたまり、出血がひどくなります。
また、力任せに縛ると今度は完全に血が行かなくなり、縛った先の組織に障害が生じる心配があります。とにかく傷の部分をしっかり圧迫。止まらないなら圧迫したまま病院へ行きましょう。
医療機関では、切り傷の患者さんが見えた場合、まずは以下のような傷の状態をしっかり観察します。
- どの部分が切れているか
- どれくらいの大きさ、深さで切れているか
- 傷は汚れているか
- 手の傷なら、切った先の指に運動や感覚の異常はないか
- 顔の傷なら、顔の動きに異常はないか etc
しっかり圧迫しても出血が続くようなら、局所麻酔(注射の麻酔)をかけてから縫合処置をします。また、いったん止血していても、すぐに出血しそうだったり、深く切れていたりといった場合には、やはり麻酔をして縫合することになります。
局所麻酔の注射は、確かに少々痛みを伴いますが、細い針でゆっくり注射することで、痛みはかなり抑えられます。麻酔をかけてしばらくすると、見る見るうちに傷の痛みは感じなくなります。この状態で、傷の汚染があれば、しっかり洗う処置をします。時には歯ブラシでゴシゴシ、なんてことも・・・。麻酔や洗浄の下処理が終わると、ようやく縫合です。
私の専門の形成外科では、入局してまず最初のステップが「傷を綺麗に縫合できるようになること」。また、「傷を愛護的(=丁寧に、優しく)扱う」ということも、徹底的に叩き込まれます。それだけ、傷を綺麗に治すことに情熱を傾けている科だと申せましょう。私自身いつも、「早く良くなれ、綺麗に治れ」と願掛けしながら傷の処置をしています。
さて、どうしても麻酔をして縫合が必要な場合については説明しましたが、血は止まっている、傷もそれほど深くない、汚染の心配もないそんな傷の時には、どうするのか。局所麻酔の注射が痛いとうこともあり、特にお子さんの傷では、悩ましいところです。親御さんからもしばしば「縫ったほうがいいんでしょうか?」と尋ねられます。
そんなときの私の答えは・・・正直ケースバイケースです。
ただ一つ言えるのは、お子さんの年齢や傷の場所、深さ、大きさ、汚染状態などなど、すべてを考慮に入れた上で、一番いいと思える方法をお勧めしている、ということです。病院に行くような怪我、というのは、生涯でそうそうするものではないだろうと思います。心配なことや疑問があれば、お気軽にご来院ください。
他院で縫合処置を受けた傷
旅行先などでケガをした場合や、休日・夜間のケガの場合、救急外来で縫合処置を受けることも少なくありません。救急外来では『生命にかかわる状態か否か』『入院が必要か否か』の判断が一番大切であり、幸いその点に問題が認められなければ、『患者さんを“帰宅して翌日以降の専門外来受診が可能な状態”』にして差し上げる』のが仕事となります。忙しい救急外来で働く医療者に対しては尊敬の念を禁じ得ませんし、「より傷跡が綺麗になるような治療」を救急外来に求めるのは無理があると思います。
当院では、他の医療機関で受けた縫合処置後のキズの診察も承っています。処置を行った病院で作成された診療情報提供書(いわゆる「紹介状」)をご持参いただくのがベストですが、それが困難な場合は、ケガの状況や治療内容等をご自身の分かる範囲でまとめたメモ等をお持ちください。医師がキズの状態を確認し、経験に基づいてできる限り適切な判断をするよう努めております。
そのまま処置を継続する場合もあれば、早期に抜糸を行う場合も、縫合しなおす場合もあります
ケガをした時の状況、縫合されているキズの部位とその状態、患者さんの年齢、基礎疾患等々、すべてを考慮に入れた上で、一番よいと思われる選択をいたします。
こちらのブログ記事もご覧ください。
→【もものマークのほけんしつ|顔のケガをした。旅先で、救急で縫ってもらった、その後に】
https://teshima-hifu-keisei.com/blog/face_wound_suture_mark/